なぜ「夜中に目が覚める」と良くないのか?“睡眠不足になるから”…ではない!
「夜に何回も目が覚めてしまうんです」という患者さんとの会話で見つけた記事です。
なぜ「夜中に目が覚める」と良くないのか?“睡眠不足になるから”…ではない!
夜中に目が覚めて、眠れない悩みはありませんか? 夜中に目が覚めても、すぐにまた寝付けたり、生活に支障を生じたりしていなければあまり気にすることはありません。しかし、夜中に何度も目が覚める、再入眠がむずかしい「中途覚醒」は注意が必要です。
なぜ「夜中に目が覚める」と良くないのでしょうか。
「夜中に目が覚める」がよくない理由
睡眠の質は、眠り始めの90分で決まると言われています。眠りには「レム睡眠」(身体は眠っているが脳は働いている状態)と「ノンレム睡眠」(身体も脳も眠っている状態)があります。寝付いた後、まず訪れるのがノンレム睡眠で、最初の90分は睡眠全体の中でもっとも眠りが深い「ゴールデンタイム」と呼ばれているからです。
眠り始めの90分で脳の老廃物を流している
ゴールデンタイムの間に一日の記憶を整理したり、ノンレム睡眠時には脳に溜まった老廃物を洗い流しているとされています。これが不足していると認知症になりやすいという研究結果も、ここ5~6年で明らかになっています。一晩でレム睡眠とノンレム睡眠を4~5サイクルほど繰り返し、明け方に近づくにつれて眠りは浅くなっていきます。そのため、最初の90分または3時間でしっかり深く眠ることが、睡眠の質を上げる最大の鍵なのです。
中途覚醒とは
中途覚醒とは、一度寝付いても夜中に目が覚めてしまうことを指します。いったん寝付けても夜中に何回も起きてしまい、眠りが浅いタイプです。
「夜中に目覚めたら眠れない」「ぐっすり眠れないことで日常生活に支障が出ている」ようであれば中途覚醒の可能性があります。
ほかにも不眠症のタイプには、朝早く目覚めてしまう早朝覚醒、なかなか寝付けない入眠障害などがあります。
中途覚醒、考えられる原因は
老化
糖尿病や高血圧などの病気
うつ、自律神経失調症
睡眠時無呼吸症候群
過度なアルコールやカフェインの摂取
ストレス など
中途覚醒の原因のひとつに老化があります。加齢によって体内リズムが変化すると、若い頃よりも眠りが浅くなる傾向にあります。
また、中途覚醒の原因として、糖尿病や高血圧が隠れていることや、うつ病、睡眠時無呼吸症候群などの疾患がある場合も考えられます。さらに、過度なアルコールやカフェインの摂取によって、脳が覚醒して睡眠が浅くなり、利尿作用で夜間のトイレ回数が多くなることもあるでしょう。加えて、精神的ストレスや身体的ストレスが原因となっていることもあるかもしれません。
このように、中途覚醒の原因は多岐にわたり、どれかひとつが原因ということもあれば、原因が複数あり複合的に絡み合っていることもあります。自分で当てはまるものを一つずつ潰していくしかありません。
中途覚醒、気にしないのはどう? 放置するリスクとは
中途覚醒を放置すると、睡眠不足によって脳機能が低下したり、ストレスがたまることによるうつ病リスクが高まります。また、通常、寝ている間は副交感神経が優位になっていますが、不眠によって交感神経が活発になることで高血圧を引き起こす可能性もあります。
睡眠不足が続くと、日中に眠気や集中力の低下を感じて、日常生活に支障が出てくることも。仕事のパフォーマンス低下、事故を起こすなど、さまざまなミスにもつながりかねません。さらに、睡眠が十分でないとインスリンの働きが低下するため、糖尿病のリスクも高まるとされています。
夜中に目が覚めたらどうしたらいい? 再入眠へのコツ
では、原因を探るまでのひとまずの対処法として、夜中に目が覚めたらどうしたらいいのか。
夜中に目が覚めてしまったら、無理に布団の中にいなくても大丈夫です。一度布団から出てアロマを嗅ぐ、温かいノンカフェインの飲み物を飲む、ゆったりした音楽を小さな音で聴くなどして、リラックスしながら次の眠気が来るのを待ちましょう。
一度に長時間の睡眠が取れなくても、過度に心配する必要はありません。ある程度まとまった短時間の睡眠を何度かに分けてとる「分割睡眠」でも、疲れを軽減させることができます。
では、中途覚醒をしたときに“してはいけないこと”とは。
中途覚醒時のNG行動
夜中に目が覚めても、スマホの操作はやめましょう。脳が再び興奮してしまいます。
また、必要以上に時間を気にし過ぎると、かえって焦ってしまいます。時計ばかり見る行為もおすすめできません。
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中途覚醒を予防する生活習慣のコツ
中途覚醒を予防するためには、毎日の生活習慣を改善することが大切です。以下のように生活習慣を直すだけでも、睡眠の質は上がります。
朝日を浴びる・適度な運動をする
日中、からだを動かして適度な疲労を感じることは、質の良い睡眠につながります。また、朝日を浴びて体内時計をリセットし、しっかり目覚めることも大切です。
昼間忙しくて運動できない人は、朝日を浴びながら少し歩くなど、夜にしっかり眠くなるようにからだのリズムを整えましょう。
寝る前のアルコールを控える
アルコールを飲めばよく眠れると思っている人がいるかもしれません。確かに、アルコールを飲むと眠くなるため、寝付きはよくなるかもしれません。
しかし、夜中にアルコールが切れると離脱症状が起きたり、睡眠の質が下がるなど、かえって逆効果になるため危険です。
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寝る前にスマホをいじらない
スマホやPCが発するブルーライトは、長時間見続けると脳が興奮してしまい、睡眠障害の原因となることがあります。スマホなどの操作は、就寝する1時間より前に終わらせるのが理想です。
寝室環境の見直しをする
寝室の湿度や温度が不快感をもたらすと、ぐっすり眠れなくなります。湿度は50%くらい、室温は、夏場は25℃前後、冬場は18℃前後に保つといいでしょう。
照明も明るすぎないように気をつけてください。
中途覚醒、病院に行く目安とは
夜中に目が覚めてしまう、寝付くことができない、その状態が続いている。それによって日常生活に支障が出ている、本人が苦しい思いをしているなどの状況になれば治療が必要です。
内科・心療内科・精神科などを早めに受診し、放っておかずに対処しましょう。
睡眠のお悩みには漢方もおすすめ
漢方薬のなかには、ストレスや不安などのデリケートな部分にも作用して、不眠の症状を改善するものもあり、実際に、睡眠外来でも自然由来の治療薬として使われています。
睡眠のお悩みには、「神経の緊張を緩めたり、心を落ち着けて精神を安定させる」「自然な眠りに導く」などのはたらきのある漢方薬が選ばれます。
また、血流を改善して、自律神経やホルモンをつくる内分泌系を整えることにより、イライラや不安、ストレスからくる不調の改善にはたらきかけます。
さらに、胃腸の消化機能を高め、栄養の吸収をよくして疲労を回復させ、胃腸の動きを整えることにより、便秘の改善にも役立つでしょう。
中途覚醒でお悩みの方におすすめの漢方薬
加味逍遙散(かみしょうようさん)
体の上部にたまった気をおろすことで熱を冷まし、イライラ、不眠症などの心身の不調にはたらきかけます。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
気をおろして精神を安定させるとともに、からだの熱を冷ますことでのぼせや動悸などにはたらきかけます。神経質でイライラしがち、精神的に不安定な人に向いています。
酸棗仁湯(さんそうにんとう)
血(けつ)を補い、熱を冷ますことで、精神を安定させ不眠症にはたらきかけます。体力が低下して、心身が疲れている人に用いられます。
このように、漢方薬には、睡眠の質を改善するはたらきがあるものもあります。 睡眠障害や、中途覚醒に用いられているものがありますが、大切なのは生薬と体質との相性です。
漢方薬は、ご自分の状態や体質にうまく合っていないと、効果を感じられないだけでなく、場合によっては副作用が生じることもありますので病院や薬局で薬剤師さんに相談してください。
中途覚醒が続くと、睡眠の質が低下して、疲れがとれなくなってしまいます。加齢とともに睡眠の質が変わってくるのは仕方ないことですが、生活習慣の改善や、必要に応じて漢方薬などの対策を日常に取り入れてみましょう。
漢方や有効ということは鍼灸ももちろん有効です。鍼灸治療で快眠ですね。