「代謝が悪い人」がやっている残念すぎる習慣
コロナ禍で自粛自粛の生活で運動不足となり、免疫と一緒によく聞くようになった代謝という言葉です。代謝が良い悪いということを患者さんと話していて見つけた記事です。
「代謝が悪い人」がやっている残念すぎる習慣
代謝のよさと太りにくさは関係しているのでしょうか?
「運動はしていないけれど、暑くてよく汗をかいているから代謝はいいはず」――本当にそうでしょうか?内科・循環器科の専門医が病気予防・肥満解消につながる「代謝の重要知識」を解説します。
代謝の良しあしと言えば、「汗をかきやすい人は代謝がいい」「体温の高い人は代謝がいい」と、よく言われます。なんとなくそう思っている人は多いかもしれませんが、はたしてそうでしょうか。
例えば、太っていて汗っかきの人がいますよね。そういう人は代謝がいいのかと言えば、むしろ代謝のオーバーヒート(代謝のシステムがうまく回らなくなり、あふれ出た脂肪が異常なところにたまり始めたり、さまざまな害を及ぼす物質を出し始めたりする)を起こしている可能性が高いでしょう。逆に、汗をかきにくい人でも、運動習慣があれば代謝がうまく回っている場合もあります。
運動をして体が温まって汗をたっぷりかくと、スッキリするものです。「あー、よく代謝したな! 脂肪を燃やしたな!」という充実感があるかもしれません。たしかに、体内に備蓄していた分を燃やしてエネルギーをたくさん使ったことは、そのとおりです。でも、1週間に2、3回汗をかくだけで、たまりにたまった備蓄分がすべて解消されるわけではありません。
■代謝は「汗のかきやすさ」「体温の高さ」ではない
体温についても、太っている人は発汗による体温調節機能が低下しているので、脂肪が体温を維持することによってむしろ平熱が高くなることもあります。そう考えると、汗のかきやすさや体温の高さで代謝の良しあしは語れません。
大事な視点は、やっぱり代謝がオーバーヒートを起こしているかどうか。つまりは、食事で摂って蓄えるエネルギーと、基礎代謝や活動代謝、食事代謝で消費するエネルギーとのバランスが取れているかどうか、です。
例えば、スポーツ選手で現役引退後に太る人って多いですよね。現役時代には食べる量も多いけれど筋肉質で基礎代謝や活動代謝も高く、釣り合いが取れていたのが、引退すると運動量が減り筋肉量も少なくなることから、食べる量に対して消費するカロリーが不足して代謝がオーバーヒートしてくるのです。
現役の力士は、内臓脂肪は少なく、大部分は皮下脂肪です。ただ、過酷な運動を行うことで、ギリギリのところでバランスを取っているので、実はゆくゆく糖尿病になる人がとても多いのです。一般の人も、例えば、部活に励んでいた若い頃と同じように食べていたら、すぐにオーバーヒートしてしまいます。
代謝のオーバーヒート、つまりメタボリックシンドロームの診断基準は、
「内臓脂肪型の肥満(腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上)」に加えて、
①脂質代謝異常(中性脂肪値150㎎/㎗以上
またはHDLコレステロール40㎎/㎗未満)
②高血圧(最高血圧130㎜Hg以上または最低血圧85㎜Hg以上)
③高血糖(空腹時血糖値110㎎/㎗以上)
ですが、それ以外にも、次のような項目に当てはまる人は代謝がオーバーヒートを起こし気味だと考えられます。一度、お腹に手を当ててよく考えてみましょう。
□①椅子に座るときには背もたれに寄りかかる
□②肥満というわけではないが、二の腕がぷよぷよ
□③足の筋力に自信がなく、片足立ちで靴下を履けない
□④筋肉には自信があるが、ズボンからお腹がはみ出している
□⑤20歳のときに比べて10㎏以上太った
□⑥健康診断で「脂肪肝」と診断された
□⑦運動習慣がない
□⑧駅や会社、マンション内のフロア移動は、エレベーターやエスカレーター。階段は使わない
□⑨1日のうち8時間以上を座って過ごしている
□⑩睡眠不足を感じている
□⑪食事は炭水化物(ごはん、パン、麵めん類)から食べる
□⑫チョコレートやクッキーなど、甘いものを食べ始めると、1、2個では止まらない
□⑬ストレスやイライラを感じると甘いものを食べたくなる
■代謝には「個性」がある
代謝がオーバーヒートしていないかということに加えて、ぜひ知っていただきたいのが、自身の代謝がもっている「個性」です。
脂質の代謝はいいけれど血糖値が上がりやすい人、逆に糖質の代謝はいいけれど脂質の値が上がりやすい人、両方とも上がりやすい人、あるいはタンパク質の代謝が悪くて血中のタンパク質が不足しやすい人など、人によって得意・不得意があります。
糖質の代謝の良しあしが表れるのが「血糖値」や、1~3カ月間の血糖コントロール状態を表す「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」、脂質の代謝の良しあしが表れるのが、主に「中性脂肪値」、タンパク質の代謝の良しあしが表れるのが「血清アルブミン値」などです。なお、アルブミンとは、血漿中のタンパク質の約6割を占めているものです。
血糖値やHbA1c、中性脂肪値は通常、高いことが問題となりますが、近年、血清アルブミンの不足が問題になっています。とくに高齢者は若い人に比べて血清アルブミン値の低い人が多く、認知症や脳血管障害、心疾患のリスクが高まること、さらには生命予後(病気が命に与える影響のこと)自体が悪くなることが知られているのです。
血糖値、HbA1c、中性脂肪値、血清アルブミン値は、いずれも血液検査で簡単にわかります。健康診断の結果を引っ張り出して、「代謝」という観点から改めて見直してみてください。
■体質は変えられないけれど、行動は変えられる
「個性」という意味では、内臓脂肪をため込みやすい人、ため込みにくい人もいます。
もって生まれた体質、つまりは遺伝的な体質によって内臓脂肪をため込みにくい人はうらやましいですよね。私の家内がまさにそうなのです。筋肉質で細い。基礎代謝が高く、太りにくい体質なのです。
ただ、家内の行動を見ていると、じっとしていることがありません。ちょっと空いた時間があるとフローリングワイパーを取り出して床を掃除したり(うちは犬が2匹いるため犬の毛がたまりやすいのです)、片づけをしたり。休むのかと思うと今度はゴルフの練習をしたりと、つねにこまごまと動いています。お酒は飲みますが、台所で料理をしながら飲んだりしているので、座ってダラダラと飲むことはありません。
そうした様子を見ていると、太りにくいのには、もって生まれた体質だけではなく、その人が取る行動の影響も大きいと気づかされます。遺伝的な体質は変えられませんが、行動は、自分次第で今日からでも変えられます。
すでに習慣になっている行動を変えることは大変ですが、そんなときには、「代謝を理解すること」がとても役立ちます。代謝を理解すれば、体内で起こっていることをイメージできるようになり、おのずと行動が変わるからです。
例えば、空腹を感じたときに飴を1つなめることがいかに残念なことかがわかります。空腹を感じたということは、肝臓や筋肉に蓄えられたグリコーゲンや脂肪細胞に蓄えられた中性脂肪など、備蓄していたエネルギーが、今まさに使われようとしているということです。備蓄倉庫のシャッターがガラガラと上がり、在庫が運び出され始めたところなのです。
ところが、そこに飴玉という糖質を投入してしまうと、糖質はすぐにエネルギーに変わるので、備蓄倉庫のシャッターが下りて、在庫の運び出しがストップしてしまいます。
つまり、「新しいモノが入ったので、倉庫から持ってくる必要はないですよ!」と、指示を出してしまったようなもの。
しかも、飴の主原料は砂糖と水飴で、どちらも「二糖類」と呼ばれる2つの糖が結合した形です。体内で簡単に単糖類(ブドウ糖)に分解されるので、たった1個の小さな飴玉でもスーッと血糖値が上がります。
血糖値が急上昇すればインスリンがワーッと分泌され、飴玉はなくなってもインスリンは残るので、脂肪をため込む働きをします。たった1個の小さな飴玉が、脂肪の在庫を運び出す機会を奪うだけではなく、次に食べたものを脂肪としてため込む用意を整えてしまうのです。
■代謝を理解すると、体が変わり、生き方が変わる!? こうしたことを理解していれば、空腹を感じたときに飴をなめようと思っても、「いや、待てよ」と、手が止まりませんか。むしろそんな残念なことはできなくなるのではないでしょうか。私は、もったいなくて、もう何年も飴をなめたことがありません。
代謝を理解すれば、体内で起きていることをイメージできるようになり、日々の行動が変わります。日々の行動が変われば、体が変わります。そして体が変われば、その後の人生が変わります。
私たちの体は、自分の食べたものを材料にできています。脂肪をため込みやすい体質の人は、代謝のオーバーヒートを起こさないような行動を選んで、ぜひ実践してください。
また、幸いにも脂肪をため込みにくい体質をもって生まれた人も、それに甘んじた生活をしていれば、かえって病気を増やしてしまいます。
やせていても糖の代謝異常がある人は少なくありませんし、事実、やせの糖尿病は結構多いのです。とくに、もともと太りにくいけれどお腹だけポッコリ出てきたという人は要注意です。
何気ない1つひとつの行動が自分の体とその後の人生をつくっていることを忘れずに、今日から、1つひとつの行動を変えていきましょう!