「たかが貧血」と甘くみると危険!? 医師に聞いた、日常生活で気を付けるべきこと
暑くなると多くなるのが貧血なんです。最近、貧血っぽい症状の患者さんが多くなり見つけた記事です。
「たかが貧血」と甘くみると危険!? 医師に聞いた、日常生活で気を付けるべきこと【セルフチェック付き】
最近疲れやすかったり、元気がでない。顔色が悪いと言われたり、生理のときの出血量が多かったり……。もしかしたらその不調、「鉄不足」が原因かも? たかが「貧血」と甘く見ていたら危険! 自分の貧血は何が原因か理解していなかったら、病気を見過ごしてしまう可能性も……。そこで貧血の主な症状や原因、対処法、女性がなりやすいと言われる理由などについて聞いてみました!
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Q1:貧血の主な症状、特徴って?
赤血球やヘモグロビン(酸素を運ぶ赤血球中のタンパク質)は全身に酸素を運ぶ働きをしていますが、貧血は赤血球やヘモグロビン(Hb)の量が不足している状態をいいます。WHOの基準では男性でHb13g/dl未満、女性でHb12g/dl未満、妊娠中の方はHb11g/dl未満だと、貧血の診断となります。
貧血になると、めまい、動悸、疲れやすいなど、様々な症状がでてきますが、自覚症状は貧血が急速に進行すると強く、ゆっくり進むと弱くなります。場合によっては全く症状がでない人もいます。
Q2:もしかして貧血かも……? セルフチェックシート
下記の項目に当てはまるものが多ければ多いほど、貧血の可能性が高いでしょう。
□ 朝から体がだるい。元気がでない
□ 疲れやすい。疲れがなかなか抜けない
□ 階段で息切れ、動悸がある
□ 爪が弱くなり、割れる、へこむ
□ 顔色が悪いと言われる、眼瞼結膜が白っぽい
□ 生理のときの出血量が多い
□ 食事の偏りがある。肉を食べることが少ない(菜食主義)。
□ 飲み物などに入っている氷を大量に食べてしまう
□ アルコールの多飲がある
□ 過度なダイエットをしている
Q3:そもそも貧血の原因・メカニズムって?
貧血の原因は沢山ありますが、大きく分けると3種類に分類されます。
① 出血によっておこる貧血
1つ目は出血によっておこる貧血で、出産や手術、怪我、鼻や痔からの出血等があります。消化管や尿路に異常がありじわじわと慢性的に出血している場合や重い月経を繰り返しているうちに貧血になることもあります。
② 十分な量の赤血球をつくれないことによっておこる貧血
2つ目は赤血球の産生不足(からだが十分な量の赤血球をつくれない)が原因となる貧血です。赤血球を作るにはたくさんの栄養素が必要ですが、最も重要なのが鉄、ビタミンB12、葉酸です。この3つの栄養素が足りないと赤血球の産生速度や産生量が低下し貧血になる可能性があります。
血液のがん(白血病、リンパ腫、骨髄疾患)が隠れていることもまれにあるので注意が必要です。
③ 赤血球の過剰な破壊が原因となる貧血
3つ目は赤血球の過剰な破壊が原因(赤血球がどんどん壊されていく)となる貧血ですが、脾腫、遺伝性球状赤血球症、発作性夜間血色素尿症など特殊な病態で、頻度も上の2つと比較すると非常に少ないです。
この中で、女性の貧血の原因で圧倒的に多いのが赤血球の成分であるヘモグロビンを作るのに必要な鉄が不足することで起こる貧血=鉄欠乏性貧血です。
Q4:「貧血は女性がなりやすい」と言われる理由って?
女性に鉄欠乏性貧血が多いのは、食事からの鉄の摂取が足りないことが一番の原因です。女性は生理、妊娠、分娩、授乳などあるので、そもそも男性より多く鉄をとる必要があるのに、月経のある女性の平均鉄分摂取量は7.4mg/日(推奨は10.5mg/日)と足りていません。そこにダイエットや食事制限が加わると、栄養バランスが偏ってしまい、鉄分が不足するだけでなく、血をつくるために必要な栄養素(たんぱく質、ビタミンB6、ビタミンB12やビタミンC)の不足が、さらに鉄欠乏性貧血を悪化させてしまいます。
女性は便秘から痔になる方も多く、持続する痔からの出血や婦人科疾患が関係した重い月経が続き鉄欠乏性貧血に至ることもあります。
【考えられる原因】
(1)食事からの鉄分摂取不足
(2)ダイエット、偏食、食が細い、欠食
(3)月経
(4)婦人科疾患(子宮筋腫、子宮内膜症)による重い月経
(5)妊娠、授乳
(6)消化管(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)、痔からの出血など
Q5:そもそも鉄分は1日にどれくらい摂るべきなの?
厚生労働省が発表している女性の鉄の必要量は、画像のようになります。
20代後半~30代の女性だと、月経がない場合は6.5mg、月経がある場合は10.5mgを、一日に摂取した方が良いと推奨されています。
Q6:鉄欠乏性貧血かな……と思った時のセルフ解決法は?
【食生活】
赤血球、ヘモグロビンの産生には、たんぱく質、鉄、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビタミンCが必要となります。この中でも重要なのが、鉄、ビタミンB12、葉酸です。これらをしっかり補給できるバランスの良い食事を心掛けましょう。飽食の時代といえども、鉄だけは例外で、摂取率は年々低下しています。鉄に関しては特に女性は意識的に摂る工夫が必要です。
【生活習慣】
食事制限やダイエットをしている方は緩めるか一度中止し、食生活を見直す必要があります。アルコールの量が多い人は減らしてください。生活習慣を見直さないと、すでに貧血の症状がある方は、通勤、仕事、運動中に動悸や息切れが増加し、ふらついて倒れてしまうこともあります。無理をせず早めに病院へ相談に行きましょう。
鉄を含む健康食品やサプリも予防には有用です。欧米の鉄欠乏性貧血が少ない国は人口の約30%がサプリメントを使用しています。
鉄不足による貧血は鉄分を補充すると必ず症状は改善されることがポイントです。サプリや食事で鉄分を摂取しても症状が改善しない場合は、治療を必要とする他の病気が隠れていることもあります。特に女性の方は重い月経の背景に子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患、出血をおこすような腫瘍性病変が隠れていることもありますので定期的な検診はしっかり受けましょう。自分が貧血になる原因をしっかり把握し、一度は評価しておく必要があります。
また、妊娠中に強い貧血があると赤ちゃんが十分な酸素をもらえない状況となり影響がでることがあります。妊娠を希望される方は妊娠前に評価をしておく方が安全ですね。
Q7:なるべく貧血が起きないように日常生活で気を付けるべきことって?
① 健診をうけて貧血の有無を確認する
早めに対処すれば食事療法やサプリで改善できますが、貧血が進行すると食事療法での改善は難しく、病院で鉄剤の処方が必要となります。
② 鉄分摂取に意識を向ける
肉類、貝類、赤身の魚などヘム鉄の多い食事を心がけ、サプリなどを上手く活用しましょう。
③ バランスの良い食事を心掛ける
鉄だけでなく造血成分といわれるビタミンB12(レバーや納豆)、葉酸(緑黄色野菜など)、ビタミンB6(いわし、かれいや卵黄)、銅(貝類、ごま)も一緒に摂取しましょう。
ビタミンCは鉄吸収を促進する作用があるので、ビタミンCを多く含む野菜や果物を一緒に摂るのがおすすめです。
④過度な食事制限やダイエットを見直し、アルコールの量を調節する
貧血は絶対に侮らないでくださいね。治るものも治らないです。