「年を取るほど血圧が上がりやすい」のは本当? どう防ぐ? 医師が解説
気温差なのか頭がクラクラする。フワフワする。首が凝る。頭が痛い…という患者さんが多いです。血圧が関係しているかも?
「年を取るほど血圧が上がりやすい」のは本当? どう防ぐ? 医師が解説
年を取ると高血圧になりやすい?
高血圧になると、心筋梗塞などの病気を引き起こしやすくなると言われています。健康診断などで血圧測定をしたときに「血圧が高い」と指摘され、気にしている人も多いのではないでしょうか。ところで、年を取ると血圧が上がりやすくなると言われていますが、本当なのでしょうか。また、高血圧をできるだけ防ぐには、どのような取り組みが大切なのでしょうか。
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糖尿病患者は高血圧になりやすい
Q.年を取ると血圧が上がりやすいと言われていますが、本当でしょうか。また、高血圧になりやすい年代はあるのでしょうか。
「血管はもともとしなやかな弾力性を持っています。しかし、長い間血管の壁に圧力を受け続けると、血管の壁に傷ができます。そこが修復される過程で硬くなったり、もろくなったりしますが、さらに進行すると内側が狭くなります。この状態が『動脈硬化』です。動脈硬化が起こった結果、血の流れが悪くなり、特に心臓が収縮して血液を送り出す際の『収縮期血圧』が高くなります。
また、年齢とともに増える脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病も、血管のしなやかさを損なう原因になります。特に注意が必要なのは、糖尿病の場合です。糖尿病の患者さんはそうでない人に比べ、高血圧になる頻度が約2倍も高いことが分かっています。
2018年に厚生労働省が発表した『国民健康・栄養調査』の結果によると、全体的に男性の方が女性より高血圧症の有病率が高く、かつ早い時期から血圧が上がりやすい傾向があります。結果を見る限り、『男性は40代から、女性は50代から高血圧症に注意』と言えますが、『20代や30代でも高血圧症になり得る』ということにも注意してください。『自分はまだ若いから、高血圧症にならない』というのは間違いです」
Q.高血圧と診断されたにもかかわらず放置した場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。
「高血圧症は特有の症状がなく、本人の知らないうちに体の各部位で恐ろしい病気が進行していくことから、『サイレント・キラー(沈黙の殺し屋)』と呼ばれています。それにもかかわらず、厚労省の調査によると、実際に高血圧で治療を受けている人は、全高血圧患者約4300万人中、1000万人程度です。つまり、高血圧の人の4人に3人が高血圧の状態を放置しているのです。
合併症の起こり方は、人によってさまざまです。頭痛や吐き気、動悸(どうき)などが先行することもありますが、ある日突然発作が起こって、亡くなることもあります。起こる病気も多種多様ですし、いくつかの病気が複合して起こることがほとんどです。合併症予防は、『早期発見・早期治療』が大事です。生命に関わる病気もたくさんあるので、健診で血圧について指摘を受けたときは、たとえ症状がなくても一度医療機関を受診してください」
高血圧を防ぐには?
Q.高血圧を防ぐためには、どうすればよいのでしょうか。
「高血圧の予防にとって大切なのは『生活習慣の修正』ですが、一般的な食事制限では長続きしません。大切なのは、今までの自分の生活習慣を振り返り、問題点を認識した上で、自分で続けられるよう、適切な生活習慣を日常生活に刷り込んでいくことです。ポイントを説明します。
【(1)食塩制限は「無理なく」「気長に」頑張る】
高血圧の場合、1日の塩分摂取量を6グラム未満に抑える必要があります。ただ、1日平均10グラム以上の塩分を取るわれわれ日本人が、いきなり6グラム未満を目指すのは大変です。濃いめの味付けに慣れた人が急に減塩食に切り替えると、食事は味気なくなり、ストレスがたまって逆効果です。
味覚から得られる満足感や楽しみを維持しつつ、減塩に取り組むには次の方法に取り組んでみてください。
・減塩料理に取り組むときは、(1)新鮮な旬の食材を使う(2)酸味やだし、香りを利用(3)ドレッシング類は『付けて食べる』(4)副菜一品は塩気の効いたものを選ぶ
・塩分の多い食品・料理(漬物、練り物、魚介類の干物、ハムやベーコン、麺類、丼物、みそ汁、煮物など)を把握し、我慢できそうな食べ物から徐々に減らしていく
・主食に含まれる塩分に注意。白米、パン、麺類のうち、塩分を含んでいないのは白米
・塩分カットの食塩やミネラル豊富な天然塩、減塩しょうゆ、ポン酢などを積極的に使用
・みそ汁は、カリウムや食物繊維を多く含む野菜や海藻をたっぷり入れること
【(2)肥満は血圧を上げ、合併症も増やす】
高血圧に限らず、肥満はすべての生活習慣病の原因になりますし、動脈硬化や心臓病などの合併症を起こしやすくなります。特に、男性に多い『内臓脂肪型肥満』は、より動脈硬化のリスクが高く要注意です。
適正体重は、身長と体重から算出される体格指数『BMI(ボディー・マス・インデックス)』の『18.5以上25.0未満』を目指しましょう。この範囲であれば生活習慣病になりにくいと言われています。1キロの減量につき収縮期血圧で約1.1ミリHg、拡張期血圧で約0.9ミリHgの血圧低下が期待できますが、急激な減量には弊害もあるので、長期的な計画を立てるようにしましょう。
【(3)運動は「軽い有酸素運動」と「程よい筋トレ」を組み合わせるのがコツ】
運動は、ウオーキングや軽いジョギングなど酸素を取り入れながら行う全身運動である『有酸素運動』と、筋力トレーニングを中心とした『レジスタンストレーニング』を組み合わせて行います。あまり負荷を上げ過ぎると、長続きしないだけでなく、場合によっては急激に血圧を上げてしまうこともあり逆効果です。『無理なく』『楽しく』続けられるメニューを組んでください。次のポイントを押さえておきましょう。
・運動量の目安は1日30分以上、週3日以上が目安。食後1時間ごろが効果的。運動開始当初はやや血圧が上がり気味になることも。10週以上の継続で効果を実感できる
・まずは自分が1日どの程度歩いているかを把握する。目標の歩数から現在の1日当たりの歩数を引いて、ウオーキングの目標歩数を決める。歩数は1日8000歩が理想だが、最初は3000歩程度から始める
・歩く際は『顎をひいて』『胸を張って』『かかとから着地』がポイント。ゆったり歩きと早歩きを交互に行う『インターバル速歩』がお勧め
・筋トレを長続きさせるコツは“ながら体操”。洗面や歯磨き中、通勤中、家事をしながらなど、日常生活の隙間時間を活用
【(4)適度に楽しむお酒はOK! 適正な飲酒量を知ること】
仕事の疲れやストレスを解消するためにも、適量のアルコール摂取は決して悪くありません。ただ、この『適量』がくせ者です。高血圧の人の1日の飲酒量は、エタノール換算で男性20~30ミリリットル以下(ビール中瓶1本、日本酒1合、焼酎0.5合程度)、女性1日10~20ミリリットル以下に制限されています。肝臓の疲労も考えて、週2日程度の休肝日も必要です。なお、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高くなる『早朝高血圧』は、晩酌と関連するので、深酒にも十分気を付けてください。
【(5)禁煙に取り組もう】
喫煙は百害あって一利なしです。特に血圧に関しては、ニコチンによる血管収縮、一酸化炭素上昇による心臓への負担増加により、喫煙直後から急激に血圧を上げてしまいます。
ニコチンや一酸化炭素は血液中の遊離脂肪酸を増やして血栓を作ったり、悪玉コレステロールの酸化を促して血管の壁を傷つけ、動脈硬化を進めたりします。また、受動喫煙はさらにリスクが高いことが知られています。あなた自身の健康はもちろん、あなたの大切な人たちの健康のためにも、ぜひ禁煙に取り組みましょう」
鍼灸治療を日々の生活に取り組むのも健康増進、病気予防の効果があります。